医療としての観点からアーユルヴェーダをみてみると、その医学体系は西洋医学と同様に、いくつかの分野に分類されています。
例えば、西洋医学における「内科」に相当するものとして、アーユルヴェーダには「カーヤ・チキッツァー(Kaya Chikitsa)」と呼ばれる分野があります。
カーヤ・チキッツァーでは、身体全体の不調を対象とした内科的治療が行われ、診察・診断に関する知識も体系化されています。
アーユルヴェーダでよく知られる「脈診」などの問診もこの分野に含まれ、脈の取り方や診断方法、そこから読み取られる身体の生理的な働きや状態など、実際の診療に必要な具体的な技術が扱われます。
こうした医学の分類は、チャラカ・ヒンヒターやアシュターンガ・フリダヤといった古典医学において「医学八科(アシュタンガ・アーユルヴェーダ)」として整理され、アーユルヴェーダの全体像を理解するための基本的な枠組みとなっています。
これら八つの分野は、それぞれが独立した専門領域でありながら、人の身体・感覚・精神・生命力といった側面を総合的に扱う医学体系を構成しています。
1. カーヤ・チキッツァー(Kaya Chikitsa)
身体全般を対象とした内科的治療。消化・代謝・全身疾患の診断と治療を扱う。
2. シャーラキヤ・タントラ(Shalakya Tantra)
眼・耳・鼻・口・喉など、頭部の感覚器官に関する医学(耳鼻咽喉科・眼科領域)。
3. シャーリャ・チキッツァー(Shalya Chikitsa)
外科医学。腫瘍や異物の除去、外科手術全般を扱う。
4. アガダ・タントラ(Agada Tantra)
薬物、毒物学・中毒学。毒や感染、解毒に関する知識と治療。
5. ブータ・ヴィッディヤー(Bhuta Vidya)
精神医学・心理学的領域。精神的障害や見えない存在による影響とされる病の治療。
魔物が憑りつくことによって起こる病気、鬼神学。
6. カウマーラブリトヤ(Kaumarbhritya)
小児医学および産科学。子どもの成長や妊娠・出産に関する医学。
7. ラサーヤナ(Rasayana)
強壮医学・若返りの医学。免疫力の向上、長寿、老化防止。
8. ヴァージーカラナ(Vajikarana)
生殖機能・強精に関する医学。生殖力や活力の維持・向上。
アーユルヴェーダの基本理論においては、ヴァータ(体風素)・ピッタ(胆汁素)・カパ(粘液素)と呼ばれる「三病因素(トリ・ドーシャ)」の働きが定義されていますが、これらの変調が、病気の発生につながるものと考えられています。
増悪したヴァータ(体風素)が血液に入り込むと潰瘍を発生させ、それが血管に達するとズキズキした痛みを生み、腱に至ると麻痺と痙攣を起こすと考えられ、ドーシャの変調が症状の原因にあるとされます。
同じようにピッタ(胆汁素)が増悪し血液に入り込んだ場合は、血液を熱し、出血症状を引き起こす原因になると考えられます。
このように、アーユルヴェーダではドーシャのバランスの乱れが様々な症状として現れると考えられており、その要因は生活習慣や食事、感情、環境など多岐にわたります。
(ヴァータ/体風素の変調要因の例)
過度な運動・歩行、長期間の徹夜、長期旅行(移動)、辛いもの・酸っぱいもの・刺激物の摂取、曇天や雨天といった天候条件。
(ピッタ/胆汁素の変調要因の例)
怒り・恐怖、脂肪分・発酵飲料の摂りすぎ、気候の暑さ。
(カパ/粘液素の変調要因の例)
運動不足、怠惰、穀物類の摂りすぎ、食事量(回数)の増加、気候の寒さ。